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美智代さんが友人に送った、毎月一度のお便り、
百二十号に及んだ『手織り通信』の十年。
ひさびさに感動する本に出会った気がします。
なんて飾り気がなく、静かで美しい文章なんだと思います.
2〜4頁の詩は、本の発刊にあたり美智代さんが詠まれたものです。
「手織り通信」の中には書かれておりません。
この三遍の詩に、彼女のほんとうの思いが込められてような気がします。
序文の詩の中にある、「人であることを忘れて暮らす日々」という、
ちょっと怖いような文章は、何を意味するのでしょうか?
彼女は生涯、ご両親との生活以外には家庭を持たずに
ひたすら手織りと自給自足の農業だけを続けた女性です。
おそらく、ふつうの女性が辿るだろう人生、伴侶との生活や子育てを
経験せずに過ごしたことを言っているのではないかと思います。
234頁の堂々たる立派な本になっていますが、美智代さんは「手織り通信」を書かれている時点では、本にする気持ちはまったくなかったようです。
きっかけは、1995年の夏に東京・京橋で手織りの展示会を開催した
ことから始まります。作品を見て感動した人々から寄せられた多くの手紙の返信として始まったようです。
彼女は機織りや農作業の仕事が忙しく、ひとりひとりに返信を書くことができません。
そこで「手織り通信」と題名を付け、コピーしたものを、送られたようです。第1号はこんな感じです。彼女としては、お礼の返信として
書いたつもりだったようですが、便りを受け取った人は「通信」とあるものですから、返信に対する返信が、また届くようになりました。
手書きによる、飾り気のなく温もりのある文章は反響と感動を生み、回し読みをされる方もおり、便りの交流は広がっていったようです。
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