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TIA BLAKE & her folk group ​ 「Betty an' Dupree」 

一枚だけ残された、幻のフルアルバム。

YouTubeで70から80年代のミュージシャンを検索していくと、思わぬお宝に巡り会えます。

知られざるフォークの名作として名高いTia Blakeもそうです。1971年、米国人である彼女が19歳の時にフランスでレコーディングされた幻のアルバムです。収録されているのは英米のトラッド有名曲ばかりですが、これが何とも心地良い。押し付けがましさのない彼女の囁かれるような歌い口と歌声で、瑞々しくシンプルに展開されていきます。オリジナルアルバムに未発表音源とデモ・リハーサル音源8曲を加えての全19曲が聴けます。

 

最初に流れる曲は「BETTY AND DUPREE」実際に起きた事件を題材に書かれたトラッドのようです。当時、18歳のFrankDupree(フランク・デュプリー)と17歳のBetty Andrews

(ベティー・アンドリューース)は恋人同士でしたが、Bettyがダイヤの指輪をおねだり。Dupreeはクリスママスの直前、アトランタの宝石店を襲い、指輪を奪って逃げる途中で警備員を射殺してしまいます。その後デトロイトで逮捕され、 裁判の後、ジョージア州で絞首刑となり電気椅子の導入前に処刑された最後の男となりました。

​いわゆる少年犯罪の強盗殺人と刑死を、Tiaはとてもあっけらかんと歌っています。陽気な楽曲と詩のコントラストが不思議な魅力を放っています。

Tiaはアルバムプロモーションの公演をパリの劇場でたった一回行ったのち、アメリカへと戻ってしまいます。76年、カナダのモントリオールに住んでいたTiaは、自作曲をカナダの放送局CBCに持ち込みましたが、曲は採用されませんでした。その後音楽活動からあっさりと離れてしまいます。幻のアルバムになるわけですね。

 

1989年には30代後半でスミス大学を卒業、フリーの作家・編集者となり、ノースカロライナに定住していましたが、2015年に病気のため63才で亡くなっています。

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