太古からの営みを続ける生き物たちが生息する
神秘的な卵池。一度は訪れてみたいと思っていました。
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訪れたのは、新緑の美しい6月下旬。モリアオガエルやクロサンショウウオの産卵期だと聞いていたからです。大芦集落から新鳥居峠を南郷方向に走ると、玉川林道への入り口があります。でも道幅の狭い砂利道で、車高のあるジープとかバイクでないと無理です。入り口に車を駐車して、徒歩で向かうことにしました。
深山幽谷の世界です。新緑が美しく、マイナスイオンをたっぷりと感じられ、とてもリラックスして歩けます。途中で車や人に出会うことはありませんでした。どこまでも歩いて行きたい気分です。
玉川の上流のせせらぎの音を聞きながら、林道は延々と続きます。歩くこと1時間半、ようやく卵池に辿り着くことができました。4WDの車が一台駐車してありましたので、どなたが
いらっしゃているのか思っていると、やはりカメラ撮影されている人がおりました、池は林道からちょっと降りた所にあります。
池端は湿地帯でぬかるみますので、リュックから長靴を出して履き替えました。先に撮影してた人に挨拶をすると、彼はせり出した樹木の枝に果実のようにぶら下がった白いスポンジ状の不思議な物体を指差して、産卵が始まっていることを教えてくれました。
何匹ものモリアオガエルが重なり合っています。
これは繁殖期になると、まずオスが産卵場所に集まり、鳴きながらメスを待ち、メスがやってくるとオスが背中にしがみつき、産卵行動が始まるが、白いスポンジ状の卵塊の形成が進むに連れて1匹のメスに数匹のオスが群がるのだそうです。
産卵が終わるとモリアオガエル達は森へ帰って行きます。
直径10-15 cmほどの泡の塊の中には卵が300-800個ほど産みつけられるそうです。泡の中では複数のオスの精子がメスが産んだ未受精卵をめぐって激しい競争を繰り広げると考えられています。
これは人間の受精とよく似ています。一個の卵子を巡り、数億個の精子が争い、最も強いものが受精の権利を得るわけです。
自然の摂理ということですね。約1週間ほど経って卵が孵化します。
孵化したオタマジャクシは泡の塊の中で雨を待ち、雨で溶け崩れる泡の塊とともに下の池へ次々と落下します。
オタマジャクシは1ヶ月ほどかけて成長して、やがて上陸します。しばらくは水辺に滞在するが、やがて森林で生活を始めるそうです。
カエルというと田んぼの中で生息するものと思っていましたが、稲の水耕栽培が始まる前は、何万年もの期間は森の中で生活していたわけです。なにか生命の誕生の厳粛な儀式を垣間見た不思議な気分を味わいました。
さて、クロサンショウウオの産卵ですが。池の周りを探してみるとやはりありました。岸辺にブドウの房のように連なった不思議な物体。
この薄緑色のものがクロサンショウウオの卵のうだそうです。
卵は4-5週間で孵化するそうです。夜行性で昼間は石や落ち葉の下に隠れて休んでいるようです。今回は出会うことができませんでしたが、卵のうを撮影できたのが大きな収穫でした。
とりあえず、NHKさんのアーカイブ動画を貼っておきます。
ヤモリやトカゲに似た水性生物のようです。
クロサンショウウオは、環境省レッドリスト2020では、準絶滅危惧(NT)とされ、長野県では天然記念物にも指定されています。
森と水がないと生息できない生物達は豊かな自然の象徴であり、ほんとうに大事な遺産だと思います。
もう卵池を二度と訪れる気持ちはありません。ずっとこのままの姿であり続けて欲しい思います。そして自然を愛して訪れる人だけにこの神秘的な美しさを見せてください。
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